2006年 05月 02日
「私の本箱〜プロローグ」でお見せした私の本箱の中から、お気に入りをご紹介したいと思います。
今回は、三浦綾子の作品から、「氷点」 この作品は三浦さんが朝日新聞の懸賞に応募して見事最優秀を獲得されたデビュー作です。 ご存じのとおり 実の子を殺した犯人の子として啓造と夏枝のもとに引き取られた陽子のお話しです。 自分は「敵を愛することができる」と思ったものの、陽子を愛することができない啓造。 陽子がルリ子を殺した佐石の子だと知り、陽子にひどい仕打ちをする夏枝。 自分がもらわれて来た子だと知っても、夏枝にひどくあたられても、けなげに育つ陽子。 しかし、自分が殺人犯の子だと知り、絶望し、命を絶とうとします。 陽子は 心が氷点に達してしまった と言って薬を飲みます。 ちょっと読んでみると、こんなひどい人間がいるのか!とか、あまりに現実からかけ離れていると一瞬思われるかもしれません。 けれど 正しいとわかっていることが行えずに呵責を感じながらも、言い訳をする啓造 いつでも自分に都合のよいように振る舞う夏枝 真実を話し合えず、腹の探り合いをする夫婦 自分だけは正しい、負けるものかと意固地になる陽子 そして 陽子を殺人犯の子だと言って啓造に渡した高木の本心は、啓造への嫉妬と挑戦 みんな普通の人間。 身に覚えのある感じ。 さて、氷点には続編があります。 続編を読んだことのない方、ぜひこちらをお読み下さい。 陽子は一命を取り留め、その出生の真実が明らかになります。 しかし、真実を知って、また陽子は苦しみます。 自分の内面を見つめる啓造 最初は陽子にすまないと思っていたのに、結局自分勝手に考える夏枝 兄として育ちながら、陽子との結婚を願う徹 彼らとの陽子の関係・・・そして新たな人間関係 続・氷点を読むことで、三浦さんの描きたかった「原罪」の問題がさらに掘り下げられていきます。 氷点も続・氷点も繰り返し読んでいるので、その度に、心に残る箇所は違ったりしますが、一番最近に読んで心に残った言葉は、陽子が学校の先生に言われたという 「汗と涙は他人のために流しなさい」 という言葉でした。 「氷点」は、1966年にテレビ朝日系列でドラマ化され、その後映画化されました。数年前にも、同じテレビ朝日系列で、舞台を現代に設定し「氷点2001」が放映されました。そして、こんどの冬にはまたテレビ朝日系列でドラマ化されるそうです。
by myrex
| 2006-05-02 23:56
| Book & Movie
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書き手2号:きょうこ
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